オレンジ色の奇跡
◆……
「今日楽しかったですね」
あたしの歩調に合わせ隣を歩く岩佐先輩。
少し見上げながら呟くあたしに気づき微笑みを返してくれた。
「また一緒にお買い物してくれます?」
「今度は、買い物じゃねぇ方がいいな」
「……ふふ。さすがに疲れましたよね」
「少し歩き疲れただけだ。
………でも、舞希が楽しそうだったから、また買い物も悪くねぇな」
最後は聞こえるか聞こえないかの消えそうな声だったけど、嬉しくて、嬉しくて………。
岩佐先輩の大きな手を握った。
あたしが握れば岩佐先輩も握り返してくれる。こんなちょっとしたことに幸せを感じ、噛みしめた。
もう少しで駅に着くなと思っていると、隣を歩く岩佐先輩が歩くのを止めた。
驚いて数歩後ろにいる岩佐先輩を見ると、すごく険しい顔している。
………見たことのない背筋がゾクッとくるような冷たい目。
見覚えのあるその様子に息が止まりそうになる。