オレンジ色の奇跡


 あぁ……、そうだ。こういう目をしていたのは昔のお兄ちゃん達だ。
 お兄ちゃん達もお兄ちゃんの友達も、何かを察するとすぐこんな目をしてたっけ……。

 何か危険なことを予感させるようなこの空気……。
 声をだそうと試みるが、口がパクパクと動くだけで何の意味も持たない。

「ちっ…。タイミング悪ぃんだよ……」

 少しばかり開いている口から漏れる不満。それと一緒にちらりと歯を食いしばるのが見える。

 繋いでいた手を離しガシガシと自分の頭を掻き乱す姿からして、さっきとは打って変わって相当機嫌が悪くなった様子。

 だいたい何が起きるのか予想が付き、内心焦りだしたあたしを余所に、案外冷静な岩佐先輩。

 そんなあたしに、岩佐先輩が持っていた買い物袋を渡し、

「ちょっとコレ預かってろ。
んで、さっき帽子買っただろ?アレを目深にかぶって、そこにある自販機で何か買う振りしてくれねぇか?」

 これから起きることは分かっているのに、頭の中はハテナマークでいっぱい。
 聞きたいことはたくさんあるが、「何で?」と聞ける余裕なんてない。

 岩佐先輩に言われた通りに、先ほど購入したキャスケットを目深にかぶった。



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