オレンジ色の奇跡

 うん、神崎先輩逆に離したくなくなるよね。 だって優衣の上目遣いってそりゃあもう卑怯でしょ?

 でも、神崎先輩は優衣の迫力に適わなかったみたいで、腕の力を弱めた。

「それでは失礼します。 梨海ちゃん舞希ちゃん行こう?」

 真っ赤になってお怒りの優衣に従うあたしと梨海は、ペコッと軽くお辞儀をしてその場から去った。

 と思ったら勢いよく腕を引っ張られて後ろを向いた。

「っえ?」

 あたしの腕を掴んだのは岩佐先輩。目が合うと気まずそうに、そっと腕を離した。

「悪い。ちょっと聞きたいことが――」

「舞希ー?」

 岩佐先輩の声を遮ったのは梨海の声。振り返れば不思議そうにこちらを見ていた。

「ごめん、先行っててー!」

 声を上げて手を振りながら叫べば、わかったー、と手を振る。 梨海が走って優衣の隣に行くのを見届けてから、もう一度踵を返し、岩佐先輩と向き合った。

「聞きたいことってなんですか?」

 ああ、と岩佐先輩が小さく息を吐いた。その時、なんだか分かってしまった。岩佐先輩が聞きたいこと。だって――

「相川に兄貴っているか?」

 ――お兄ちゃんたちと同じ瞳なんだもん

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