オレンジ色の奇跡




 ……やっぱ?
 やっぱ来ちゃった?

 えぇっと、こういう時って、右肩に乗ってる手首を掴んでひねるんだっけ?

 それで、それで、ひねった後――

「……邪魔」

 そう後ろで呟やくのが聞こえた後、おもいっきり右肩が後ろに引っ張られた。

「きゃっ……」

 予想外の展開に驚いたあたしはバランスを崩し、そのまま地面に倒れこむ。

「…いっ!」

 コンクリートの尖った部分が手のひらに刺さる。
 手のひらだけではなく、体の至るところに鈍い痛みが襲っていたが、歯を食いしばって顔を上げれば、白に近い金髪の男があたしを見下ろしているではないか。

「ボケっとしてんじゃねぇよ。
邪魔っつてんだろ!」

 なんなんだ。この馬鹿男。

 アンタの所為で転んだっていうのに、謝罪の一つや二つあってもいいんじゃないの?

 なのに、何よ、その目。

 見た目で判断なんて性に合わないけれど、コイツは見た目通りの性格の持ち主ね。

 心の中で毒づきながらも「すみません」と呟き、コンクリートを睨み付け必死に怒りを耐えた。

 その男は、自販機で飲み物を買った後、「カジ」と誰かを呼びながら戻っていく。

 ほんっとに、ムカつく。

 お兄ちゃんの友達は皆、見た目はさっきみたいな人ばかりだったけど、中身はちゃんとしてた。

 外見がアレなんだから中身ぐらいしっかりしなさいよ。
 無事で帰ってこれるなら、数発お見舞いしてあげたい。

 ……キレやすいのは、兄妹の遺伝なのかも。




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