オレンジ色の奇跡
「……あぁ、田村(たむら)さん。久しぶり」
田村さんと呼ばれた男性は、ハッハッハと豪快に白い歯を見せながら笑ってみせた。
「啓輔、久しぶりじゃないだろ?
最近、喧嘩しないなと思ってたら今度は絡まれるのか」
「はやくアイツら捕まえろよ。
カツアゲとかしてるからさ」
「分かったよ」
岩佐先輩、警察官とお友達なんですね。
……お友達って言うのかな?たぶん昔お世話になったんだろうなぁ……。
「舞希、悪かったな」
田村さんと話していた岩佐先輩が、あたしに向き直り頭をワシャワシャと撫でた。
「ん…。頭ぐちゃぐちゃになっちゃう!」
「アハハ!」
「啓輔の彼女か?」
「あぁ」
「相川舞希と言います。田村さん、先ほどはありがとうございました」
自己紹介の後、頭を下げれば「いいんだよ、いいんだよ」とあたしの肩をバシバシ叩いた。
「ん?相川舞希って言うのか?
………もしかして、朔真と晴樹の妹?」
「あ、はい。そうです。兄がお世話になりました」
ひぃぃっ!
お兄ちゃん達顔が広いよ!
もちろん、悪い意味で。
「それじゃ、俺達は交番に戻るな」
再び自転車に乗り、右手を挙げながら去っていった。
さっきまで大きかった背中が小さくなるのをぼーっと見つめていれば、
「啓輔、私にお礼はないの?」
聞き覚えのある凛とした声。