オレンジ色の奇跡



「ふふっ。私の自己紹介がまだだったわね。
私ね、坂桑(さかくわ)千紗って言うのよ」

「………っ?!も…もしかして、先輩の幼なじみの方ですか?」

「ふふっ、腐れ縁とも言うかしら」

 ………千紗さんは岩佐先輩の幼なじみなんだよね?

 ヤバイ……、どうしよう。すごい勘違いしちゃった。

「……いい加減離れろ」

 うわー。声からして怒ってるよ……。

 ちらっと岩佐先輩の方へ視線を向ければ、左足に体重をかけ腕を組んでこちらを睨んでいる姿があった。

「……千紗さん。すごく怖いんですけど」

「私の背中に痛いほど視線が刺さってるわね。

そうだ。相川ちゃん足捻挫してるみたいだし、病院行かなきゃよ?」

「え?大丈夫ですよ?ほら……」

 千紗さんから離れて歩こうと足を動かしてみるが、さっきより腫れているらしくすごく痛い。

 立っていられず座り込むあたしを見た千紗さんは「病院行こうね?」と促し携帯を取り出した。

「うー、痛ぁ…」

「……おい。怪我か?」

 顔を上げれば心配そうな表情の岩佐先輩。
 コクっと頷けばあたしの前にしゃがみ左足首に触れた。

「……っ」

「結構腫れてるな。

立てるか?ほら、手貸してやるから」

 パッと目の前に差し出された大きな手。

 その大きな手を掴んでいいものか。
 たった今、あたしは、岩佐先輩を疑ってしまったのだ。

 きっと、すごく怒っているはず。

 それなのに、あたしに手を差し出してくれる優しさ。



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