オレンジ色の奇跡


 赤くなってる………。
 数発殴らせたんだもんね。

 殴られた跡を指で触れる。

「……痛い?」

「別に。慣れてるし。

……てか、何考えてたんだ?どうせ、俺が千紗にどーのこーのだろ?」

「いや……別に――」

 バ、バレてる……。

 なんで?声に出てたかな?っていうか、素直に言ったほうがいいのかな?

「別に?」

「あ、のね?」

「そこの二人早く立ってもらえません?病院行くんだから」

 会話を遮られ千紗さんを見ると、両手を腰にやっていた。

 そういえば、病院に行くとか言っていたな、と頭の片隅で思い出す。

「は?病院ってどこのだよ?」

「総合病院だけど?」

 “総合病院”という言葉に眉を寄せる岩佐先輩は立ち上がり、千紗さんと視線を合わせた。

「おい、千紗。てめぇ、電話の相手って――」

「大輔さんよ?何よ、不満そうな顔して」

 大輔って岩佐先輩のお兄さんだよね?
 これから病院に行くのになんでお兄さんに電話なんてするんだろ……。

「もしかして、言ってないの?」

「…………」

「……先輩?何を言ってないんですか?」

「あっちについたら、兄貴の紹介と説明するから」

 あたしを立ち上がらせながらそう呟く先輩を見つめれば、「大したことねぇよ」と頭を撫でる。

 岩佐先輩に掴まり、痛い左足を引きずりながらも千紗さんが呼んだであろうタクシーに乗り込んだ。


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