オレンジ色の奇跡
◆……
病院に一歩入ると、病院独特の消毒の様な匂いが鼻を掠める。
この匂い……嫌い。
匂いというか、病院自体嫌い。
「……き?…舞希?」
「あ、はい」
「どうした?」
「え?」
「相川ちゃんさっきからずっとぼーっとしてたのよ?なんだか顔も白いみたいだし」
「あたし、病院って嫌いなんです。良い思い出がなくて……」
まさにフラッシュバックっていうやつかな?
病院のベッドで寝てるあたしの横で泣きじゃくるお母さん。
今にも泣きそうにあたしの手を握り締めるお父さん。
後ろの方で、悔しそうな表情で立っているお兄ちゃん達。
何であたしが病院にいて、包帯でぐるぐる巻きにされて、みんなが心配そうにあたしを見ている理由が分からなかった。
今でも分からないけど……。
「啓輔!ちーちゃん!」
タッタッタと軽快にこちらに向かってくる若い男性。
黒の短髪に薄いブルーの白衣、左胸辺りにあるネームプレートが蛍光灯によって反射し白く光っている。