オレンジ色の奇跡


 ネームプレートの反射がなくなり書いてある名前が見える位置まで近づいた。

 あたしは、目を細めてネームプレートを見ると、

「“岩佐”?………って、え?先輩のお兄さんっ?!」

「はぁ…はぁー」

「だらしねぇな。そんなくらいで息上がってんじゃねぇよ」

「どっから走ってきた、と、思ってるんだよ」

「とりあえず、兄貴、コイツに湿布貼ってやって」

「んぇ?コイツって……、この可愛い子?!」

「そんな、可愛いくな」
「そうよ。大輔さん、この可愛い子。
残念ながら啓輔の彼女」

 後ろからギュウっと抱きしめ頭を撫でる千紗さんに「ちっ」と舌打ちをする岩佐先輩。

「け、啓輔の彼女?!うそだっ!」

「…相川舞希です」

「うえっ?!晴樹の妹っ!?」

「そ、そうです……」

 大輔さんって晴兄の親友なんだっけ?
 それより、なんでこんなに驚かれるんだろ?

 大輔さんは「そっか、そっか」と頷きながら、近くの一室にあたし達を案内した。

「救急箱とか持ってくるから待っててねー」

 にっこりと微笑んでから部屋を後にする大輔さん。

 うん、似てるな。岩佐先輩と大輔さん。
 あたしのお兄ちゃん達は全然似てないのに。


< 235 / 438 >

この作品をシェア

pagetop