オレンジ色の奇跡


「じゃあ、私はここで」

「おう」

「ありがとうございました」

「いいのよ、気にしないで。また今度、お話しましょ?」

「あ、はい!よろこんで!」

「ふざけんじゃねぇぞ、千紗!」

「ふふっ。私を敵に回すと怖いわよ?」

「てめぇ……」

「あら、時間よ。じゃあね、相川ちゃん」

 綺麗な顔で柔らかく微笑み、顔の近くで上品に手を振りながら部屋を出ていった。

 何度も思うけど、千紗さんって綺麗。
 同性のあたしですら見惚れてしまうほど。

「見惚れてんじゃねぇよ」

「だ、だって……。千紗さん、すごく綺麗なんだもん」

「………どこが?」

「はい、湿布とか持って来たよ。って、あれ?ちーちゃんは?」

「さっき、帰ったよ」

「そっか!

えーと、舞希ちゃん。そこに座ってー。
左足だったかな?出してもらえる?」

「あ、はい」

 よく見る黒い長椅子に腰掛け、素直に左足を出す。
 大輔さんは、手際よく腫れた部分に湿布を貼り、軽く包帯で巻いた。

「はい。できた!」

 あたしの足を静かに下に下ろしたあと、岩佐先輩の顔を見て「啓輔はいっか」と頷いている。

 ……絆創膏も何もあげないんですね。


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