オレンジ色の奇跡
「あーと……。舞希?」
「はい?」
急にかしこまって「立てよ」と大輔さんを立たせて自分も立つと岩佐先輩は、
「紹介すんの遅くなったけど。
……兄貴の大輔」
「啓輔の兄、岩佐大輔です」
大輔さんは、にっこりと微笑み、大きな手を差し出した。
あたしも手を差し出し握手をする。
大輔さんの手は大きかったが、女性にも負けず劣らずな綺麗な手をしていた。
「それで、病院(ここ)の院長、親父」
「へぇー!…………え"?」
岩佐先輩のお父さんは、この総合病院の院長?
……ってことは、だ。
「お父さんに挨拶に行かなきゃっ!」
「……は?」
「え?だって、院長なんだから病院にいるんでしょ?」
「そこか?!気にするところは!?」
「他にどこを気にするっていうの?!」
「………」
言葉を失ったかのように呆然とあたしを見つめる岩佐先輩。
そんな岩佐先輩の隣でクスクス笑っている大輔さん。
何がそんなに可笑しいのか分からない。
近くにいるのなら挨拶くらいしたいと思ったのが間違いだったのか。