オレンジ色の奇跡
◇◇◇
踵を返し、背中を向け小走りに去っていく、俺が助けた女。
「なぁ、啓輔。あの子……」
黒に近い茶色(チョコレートみたいな色)で肩くらいの長さの髪。大人っぽさを持ちながらも、所々にあどけなさを持つ顔つき。
相川舞希、か。
「あぁ、朔真さんたちの妹だ。今、気付いたのかよ。 名字で気付け、バカ」
「バカって! ……でも。妹だなんて考えてなかったよ」
踵を返したのと同時に祥也の顔を見れば、驚いたな、と呟いた。
確かに。特に顔が似てるってわけでもねえし、昔を知らなければ“相川”には気付ねえ。
「昔、“不良のヒーロー”と呼ばれた兄弟の妹、か」
小さく言ったそれを祥也が拾った。
「舞希ちゃんはそのこと知ってるのかな」
「知ってても知らなくても、あいつは朔真さん達が好きなんだろうな」