オレンジ色の奇跡


「………お父さんと先輩は別でしょ?」

「そうだけどさ…。親父が院長ってだけで、俺達兄弟も“将来は医者”っていうレッテルが貼られるんだ。
なんでもかんでも『お父さんが』で済まされる。

………兄貴と晴樹さんて性格が正反対だろ?」

「うん。晴兄の親友だからっていう偏見もあったんだけど、全然違うなって思った」

 ホントに。朔兄と晴兄も正反対だとは思うけど、そのさらに上を行くほどの正反対さ。

 お兄ちゃん達が、家につれてくる人の中に黒髪の人なんてアノ人を除いてはいないはず。

「晴樹さんはさ、兄貴に『医者の息子?長男?……へぇ。だから?』って言ったんだってさ」

「それで?」

「兄貴スゲー喜んでた。初めて『親の跡を継ぐんだね』って言われなかった、って」

「そっかー」

「まぁ、院長の息子って言われたら同じレールを進むって思うよな。普通はな」

 ははっ、と笑いながらあたしの頭をグッシャグシャにする。

 そんな岩佐先輩に「もうっ」と言いながら身体を離す。


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