オレンジ色の奇跡
◆……
「お邪魔しまーす」
「誰もいねぇよ」
「そうだけど、ね」
自分で来るって言ったんだけど……。
口から心臓が出るんじゃないかってほど緊張してる。
岩佐先輩の後に付いていくように短めの廊下を通り、ダイニングに入った。
黒いソフトレザーでできたソファーに膝より少し低い白いテーブル。
「袋貸して。んで、そこ座れ」
「あ、はい」
言われた通りソファーに腰を下ろし部屋を見渡す。
白と黒で統一された部屋。
ソファーの後ろに、ひとつドアがある。
見たところ、ダイニングと通じるのは、このドアのみ。
「荷物は、そこの部屋開けたとこに置いてこい」
指差された部屋を恐る恐る開き中を覗くと、そこは寝室。
焦げ茶色で統一されたベッドカバーに、白い遮光カーテン。
ベッドの大きさは、ダブルくらい。
入り口付近にちょこんと荷物をまとめて置き、静かに部屋を出た。