オレンジ色の奇跡
しばらく三人で話していると『キャアァァアア』と窓が割れんばかりの黄色い声が響いた。
「噂をすれば旦那様のお迎えよっ!」
「っもう!」
梨海の冷やかしに顔を真っ赤にする優衣は両手で顔を覆いながら俯いた。
「おっ? いたいた! ゆーいっ!」
教室の入り口で大きく手を振る神崎先輩は、嬉しそうに顔を綻ばせていて、その後ろにいる岩佐先輩は迷惑そうに眉を寄せている。
あはは。“優衣ちゃん”から“優衣”になってる。
急いで教室の入り口に行く優衣に、神崎先輩はにっこりと笑ってから、
「ん? 俺、梨海ちゃんと舞希ちゃん呼んだっけ?」
不思議そうに、そして、邪魔そうにあたしたちを見る神崎先輩。
「こんにちは。神崎先輩、岩佐先輩」
あたしと梨海が一歩前に出て優衣と並んだ。四つの瞳が神崎先輩に注がれる。
「呼ばれたのは優衣ですけど、神崎先輩に言っておかないといけないんで」
真剣で凛とした梨海の言葉に、うんうん、とあたしが頷く。ちらりと梨海を見れば、かちりと目が合った。 うん、と頷いてから、
「「優衣を傷つけたら絶対、ぜぇったい許しませんからっ!!」」
二つの声が重なり響いた。