オレンジ色の奇跡
「ご、めんなさい……」
「謝んなきゃなんねぇのは俺だから」
「さて、面接行くか」
あたし達を二人きりにさせるためか、面接に間に合わなくなるかは分からないが、ユウにぃの一声でタケちゃんもモヤシも「じゃあな」と別れを告げる。
三人の足音が遠くなっていくなか、岩佐先輩の靴があたしの視界から消えた。
数秒後、キィー、という音に顔を上げ、隣を見ると岩佐先輩はブランコに乗っている。
「寒ぃから家帰ろーぜ」
大きくブランコを揺らす岩佐先輩は空を見つめている。
ある程度ブランコを漕いだ後、「よっ」と言いながら飛び降りた。
「舞希が知りたいこと全部話してやる。だから、一緒に帰ろう」
「……先輩……」
「俺の気が変わる前に帰ったほうが良いって思わねぇか?」
「……っ。はいっ!」
優しく微笑む岩佐先輩の胸の中に飛び込む。
そんなあたしを優しく包み込むように抱きしめる岩佐先輩。
「悪かった。ホント……、俺が悪かった」
何度も、何度も頭を横に振る。
外気に触れ、冷えた体を岩佐先輩に温めてもらっていると、頬がひんやりとした。
「うわ、雪、降ってきた。早く帰るぞ」
岩佐先輩の声に釣られて上を向けば、濃い灰色の雲。
少し大きく水を含んだであろう綿雪が空を舞う。
「これ、着ろ」
「でも……」
「いいから」
手渡されたダウンジャケットに手を通す。
あたしには、大きいジャケットから手を伸ばし岩佐先輩の手を握る。
そのまま、雪が降る道へと脚を進めた。