オレンジ色の奇跡
「っ!!!!」
右腕が捕まれ、背後に立っているであろう男からガムを食べる音が耳障りなほど耳にまとわりつく。
「ねぇーちゃん!こっち向こうよー?」
男にしては高めの声で話しかけられた。
捕まえといてそれはないでしょ、あたし帰りたいのにっ。
と心では思ってたけど声には出さず、その代わりにあたしは振り返り自分と頭1つ分ほど違う男を下からきつく睨み上げた。
「そんなに怖い顔しないでくれるかな? 可愛い顔がもったいないよ〜?」
男の風貌は、とにかく派手な格好をしていて口には無数のピアスをしてる。
それにしても、鼻が曲がってしまうのではないかと思うほど香水がきつい。
「腕、離してもらえませんか?」
静かに、且つ、睨みを利かせて吐き出した言葉に腕を掴んでいる男は、ニヤリと音が出そうなほど片方の口角を上げ不気味な笑みを浮かべた。
「今から遊び行かない?あんた可愛いし、結構スタイルもいいし」
やっぱり体目的なのか、としか言いようがない。日本の方が治安が良いって思ってたけど……。
「……だからっ――」
「これから楽しいことするのにさー。もちろんついてきてくれるよね?」