オレンジ色の奇跡


 確かに、敬語だと少しキョリを感じる。

 でも、今ごろ?って思う気持ちもある。

「あ、の……。今、すぐ、敬語を止めろって言ってるんですか?」

「あぁ」

「それは、無理です」

「は?何でだよ……。そんなに、俺とキョリ作りたいわけ?」

「違います!あたしは、ただ、すぐは無理だって言ってるんです!」

「何で、すぐはダメなんだよ……」

 さっきの威圧的な声でなく、弱々しい声で呟く岩佐先輩は、あたしの腕を引っ張り、脚と脚の間に座らせた。

 ため息とともに、後ろから抱きしめる岩佐先輩に包まれながら、ゆっくりと口を開く。

「あたしにとって岩佐先輩は、大好きな人でもあるし、先輩なんです」

「……うん」

「何て言えばいいのかな……。先輩は先輩?あ、でもな…」

「え?」

「あっ…ごめんなさい。えっと、あたし、先輩のこと大好きですよ?大好きなんですけど…」

 何て言えばいいのかな?

 好きだけど、先輩っていう要素が強い?

 なんて言ったら、変な風に捉えちゃうよね……。

「分かったよ。無理強いはしない」

「……ごめんなさい。追々、普通に話せる様になればいいかなって思ってたんです」

「じゃあ……、俺が卒業したら、ぜってぇ敬語止めろよ?」

「あ、はい。
あっ……。あたしからも、お願いしてもいいですか?」

「何?」

 岩佐先輩の脚の間で、くるりと体制を変え、向き合うように移動する。

 物凄く、驚いてますけど無視よ。ムシ。


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