オレンジ色の奇跡


「もうギブアップかよ」

「っ……はぁ…。だって、いきなり過ぎるから」

「足りねぇ」

 と、呟く岩佐先輩。

 まだ、息が整っていないが、降ってくる顔にあわせて目を閉じたとき。

 ピーンポーン、と軽快なチャイム音。

 岩佐先輩は「…ちっ」と舌打ちをして立ち上がった。

 あたしも起き上がりソファーに座る。

 取り上げられた飲みかけの紅茶を飲んでいると、玄関で言い争う声が聞こえてきた。

 何かあったのかな、と思いつつも紅茶を飲み続ける。

 しばらくして、玄関の閉まる音がした後、すぐに岩佐先輩が戻ってきた。

「大丈夫ですか?」

 顔つきからして不機嫌な岩佐先輩を、逆なでしない様に聞けば「おう」と、ひとこと。

 あのー。
 誰が来たのかすごく気になるんですけど。


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