オレンジ色の奇跡


「兄貴が、喚きやがった」

「えっ?」

「気にすんな」

「気にします!!まだ、玄関前にいますよね?」

「さぁな」

 しびれた脚を確かめながらゆっくりと立ち上がり、これまたゆっくりと玄関に向かう。

 鍵を開け、静かにドアを開くと、大輔さんが壁に寄りかかって座っていた。

「……だ、大輔さん?」

「あれ?舞希ちゃんだ」

「大丈夫ですか?中、入ります?」

「入っていいの?」

「外、寒いですし」

「ありがとう」

 ドアを押さえているあたしの横を通りすぎる大輔さん。

 この前は、爽やかで元気はつらつの印象だったのに、なんだか今日は、萎れた朝顔みたい。

 そんなちっちゃくなった大輔さんの背中を見ながら、岩佐先輩のもとへと向かう。


< 309 / 438 >

この作品をシェア

pagetop