オレンジ色の奇跡


 すっと立ち上がる岩佐先輩を、目線のみで追うと、出来上がった大輔さんに絡まれた。

「舞希ちゃんはさー。アイツのどこがいいのー?」

「優しいところですかね」

「アレのどこが優しいんだよー」

「大輔さんが、思っている以上に優しいですよ?」

 お酒の所為で赤くなった大輔さんに「お水飲みます?」と、声をかける。

 それにしても、弱いな。

「だーいーすーけー」

 不意に聞こえてきた声に驚いて、声の主を探せば、髪の毛がボサボサな晴兄の姿。

「ははは晴樹!!!」

 まるで、猫に見つかったネズミのように、飛び跳ね、あたしの後ろに隠れた。

「てめぇ、舞希の後ろに隠れてんじゃねぇよ」

「か、隠れてない!よ、寄り添ってるだけ!」

「ほーう。てめぇ、俺だけじゃなくて啓輔も敵に回したな」

「ちっ違っ!!」

「何が違うんだよ?」

「あ…そのー、ね?あ!アレだよ!アレ!」

 なんですか?
 この、微妙な攻防戦。


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