オレンジ色の奇跡


「部屋にはいなかったよ」

「ホントに?じゃあ、ベランダかなぁ」

 キッチンからベランダに向かいながら、ゴム手袋を外す。

 いつもはそのままの髪の毛を、少し高めに一本に縛った。
 その髪の毛を触りながら、伸びたなぁ、なんて考える。

 ベランダのガラス扉に手をかけ、静かに右にスライドさせた。

 リビングからは見えない位置にしゃがみ、タバコをくわえる晴兄。

「おう」

「おう、じゃないでしょ!!」

「雨、降りそうだな」

「そうだねぇー、っておい!」

「随分とノリツッコミが上手くなったこと」

「大掃除、手伝って」

「はあ?俺、やりたくな」
「手伝わないの?」

「……ったく。めんどくせー」

 って言いながらもベランダから出て行く晴兄に微笑んだ。

 そのままあたしも、家の中に戻ろうと思ったが、天気が気になり手すりに手を置く。

 ちょっと身を乗り出して下を見ると、一面真っ白の世界。


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