オレンジ色の奇跡


「……えっ?」

 あたしの視界に入ってきたのは、必死に笑いを堪えている男の姿。

「いっ!岩佐先輩っ!!」

「ぶっ……ははははっ!!」

 え?
 何でココにいるの?!

 っていうか。
 何であたし笑われてるの?!

「え?ちょっ…。岩佐先輩?」

「っ……ゴボウって!!」

「ゴボウ?ゴボウが何ですか?っていうか、何で、ココにいるんですか?」

「っ…買い物にスーパー来ちゃ悪ぃかよっ」

 悪くないですよ!?

 スーパーの正しい利用の仕方ですけど!!

「いい加減、笑うの止めてもらえません?」

 あたしが何かしましたか?!

 目尻に涙を溜めて、左手でちょっとわき腹を押さえて……。

 バカにしてます?
 してますよねぇ?!

「だったら、ゴボウをカゴに入れろ」

「は、い……」

 何故か、笑いのツボが『ゴボウ』だった岩佐先輩に促され、右手に持っていたゴボウをカゴに戻す。

 っていうか、あたしだって気付いてたなら、声くらいかけてくれたっていいですよね?


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