オレンジ色の奇跡


「あ〜、おもしれぇ。……あっ」

 やっと笑いから解放されたらしい岩佐先輩は、あたしを見るなりすっとんきょうな声を上げた。

「はい?」

「い、や……。何でもねぇよ」

「何でもないんですか?」

 自分で言っといて『何でもねぇ』は、卑怯ですよ?

 だから、あたしの声がやや低くなってしまったのは仕方なかった。

「……ただ。ソレ、付けてくれてるんだって思っただけ」

 遠慮がちにあたしの首よりちょっと下辺りを指差す岩佐先輩。

 そこには、クリスマスにもらったネックレス。

 嬉しそうな恥ずかしそうな岩佐先輩の表情が、なんだか可愛い。

「毎日、付けてますよ?」

「……ふーん」

 素っ気ない返事だけど、あたしの髪の毛をグシャグシャに撫でる辺り、機嫌がいいのかな?

 そんな岩佐先輩に背を向けて歩きだす。

 カートを一番空いているレジへ進め、お財布を取り出した。


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