オレンジ色の奇跡


「ぼぉっとしてんじゃねぇよ。ほら、行くぞ」

「え?あ、はい!」

 いつの間にか、会計を済ました岩佐先輩に連れられ、まだ止まない雨の中へ繰り出した。

 雨の中を歩いて5分も経たないうちに、新しそうなパン屋さんが見えてくる。

 白と茶色で整えられた外装。

 ほんの少しだけど、アンティークな香り。

 でも、老若男女問わず入りやすい感じ。

 パン屋さん独特の大きなガラス。
 そのガラスから見えるパンは、どれも美味しそう。

 焦げ茶色のチョコレートみたいなドアを押して中に入ると、焼きたてのパンの匂いがあたしの体に充満する。

「いい匂いですね」

「だな」

 入ってすぐ左にある白いトレイと茶色のトングを両手に持ち、一目散にパンへ。

 すすすすごく美味しそうっ!!

 普通のパン屋さんよりは、店内はやや狭め。

 だけど!

 そんな狭さなんて気にならないくらい、パンの種類が豊富。

「美味しそう……」

「ヨダレ垂らすなよ?」

「た、垂らしません!!」

 もう!
 凄くお腹が減ってるからって、ヨダレ垂らすような人間に育った覚えはありません!!


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