オレンジ色の奇跡


 キッと岩佐先輩を睨んだ後、目の前にあったメロンパンに手を伸ばした時。

「舞希ちゃん?」

 アルトよりの心地よい声があたしを呼んだ。

 え?
 ……この声聞き覚えがある。

 ゆっくりと、頭、体の順番で振り返った。

「寛子(ひろこ)ちゃんっ!!」

「久しぶり!元気だった?」

 心地よい声の持ち主、寛子さんは、艶のある黒髪を黄色のシュシュでまとめている。

 確か、寛子ちゃんも5年ぶりくらいに会うんだっけ?

 それでも、5年前と変わらずほっそりとした身体にひまわりみたいな笑顔。

「すっごく元気!寛子さんは?」

「元気!元気!」

 にっこり笑う寛子ちゃん。

 それでも、なんだか違和感を感じてしまう。

「…カズくんと何かあった?」

 遠慮がちにトレイを握り締めながら聞く。

 最近、久しぶりに会いたい人の中で、群を抜いて一番に会いたかったカズくん。

 そのカズくんの彼女が寛子ちゃん。

 でも、5年前の話だから、終わっちゃってる可能性もあるんだけど……。


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