オレンジ色の奇跡


 躊躇いもなく言い放たれた言葉は、あたしの耳を通りすぎていく。

 出来ることなら、頭になんて留めて置きたくない。

「や、やめてよ……。冗談もほどほどにして…」

「冗談でこんなこと言うわけないじゃない」

「ウソだよ……」

 ウソだよね?

 カズくんが死んだなんて。

 誰でもいいからウソって言って………。

「ウソじゃない」

 ゆっくりと視線をトレイに移し唇を噛み締める。

「ごめんね?報告が遅くなって」

 寛子ちゃんは悪くない。

 悪いのは、多分お兄ちゃん達。

 だって、寛子ちゃんからあたしへの連絡はできないもの。
 連絡できるのにしなかったお兄ちゃん達が悪い……。

 だったら、お兄ちゃん達に聞くのが最善だと思うのね。

「あたし、家に帰るね?お兄ちゃん達に色々聞きたいことあるから……」

 トレイを寛子ちゃんに突き付け、パン屋さんを飛び出した。


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