オレンジ色の奇跡
――カズくんもそうだったな
物心ついた時からカズくんは近くにいて、家族同然。
カズくんは、お兄ちゃん達の友達には珍しい黒髪。
朔兄と同い年なのに、朔兄のお兄ちゃんみたいだったな。
そういえば、よく公園で遊んでもらったけ?
だから、日本に帰ってきたあの日、公園に行ったんだよね。
………あたし、バイバイも言えなかったんだ。
無意識のうちに、あたしの足は、懐かしい公園に向かっていて。
公園へ降りる階段へ、近づき降りようとした時。
微かに、あたしを呼ぶ声が聞こえた。
「………ま…きぃ!!」
バッと振り返ると、傘を差しながら走ってくる岩佐せんぱ……っ!!!
ギュルという靴底と階段の縁が擦れあう音と共に、上半身が重力に従っていく。
必死に手すりに手を伸ばし掴むが、あいにくの雨のため、滑ってしまった。
そのまま肩から全身を強く打ちながら階下…へ。
階下にたどり着く前に、あたしは暗闇の中へ放り込まれた。