オレンジ色の奇跡


 あの時、新しいパン屋ができたことを言わなかったら、和広さんが死んだことを知らなくて済んだ。

 あの時、名前を呼ばなければ階段から落ちなくて済んだ。

「………俺の所為、だ」

「え?」

「全部、俺が悪いんだ…」

「啓輔っ…。変なこと考えるなよ?」

「舞希は、俺と一緒にいていいのか?」

「何言ってんだよ!」

「これから先、俺と一緒にいて危険な目に合わない保証も理由もない」

 それに、危険な目に合ったとしても必ず俺が助けられるとは限らない。

 それなら、いっそのこと……。

「だぁーっ!!!
啓輔、お前は少し寝たほうが良い!!ってか、寝ろ!!
変なこと考えるなって言っただろ?!今は、舞希ちゃんの無事だけを考えろ、な?」

 そうだよな……。

 今は、舞希の無事だけを考えるか。

「………あぁ。分かった。少し、寝るからベッド貸してくれ」

 祥也は、俺より先に立ち上がり寝室の扉を開けながら「了解」と微笑んだ。




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