オレンジ色の奇跡

危機ときっかけ


 優衣と神崎先輩が付き合い始めてから、神崎先輩は毎日優衣の様子を見に来ていた。

 優衣が嫌がらせを受けていないか、とかこっそりあたしたちに聞いてくる。

 今のところ何も起きていないけど、神崎先輩は不安なんだろうな。

 優衣本人は、女子生徒(特に神崎先輩のファン)達になにかされるのかなと恐れていた……はずもなく。神崎先輩のファンの女の子がいるとか、もしかしたらいじめられるんじゃないか、とかは全く気にしてないっていうか、気付いていないみたい。

 まあ、ファンの人たちは優衣のことを認めてるみたいでかなり友好的らしいの。

 やっぱり、問題は男の方か……。

「なーんか難しい顔してるけど?」

 あたしの目の前で片肘をついた方の手のひらに頬を乗せて軽く笑う梨海。

「……あっ。ごめ、つい……」

「はあ。……大丈夫よ。優衣は、あたしたちが守るのよ?」

 あたしを安心させるかのように穏やかに微笑み、釣られてあたしも微笑んだ。

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