オレンジ色の奇跡


 しんとした病室にひとり残されたあたしは、まじまじと受け取った手紙を見つめる。

 何が書いてあるんだろ……。

 コレ書いたのって、死んじゃう前だよね?

 じゃあ、前の手紙みたいな世間話とか?

 手紙を引っ繰り返すと、カズくんの名前。

 寛子ちゃんは「読んじゃった」なんてお茶目に言ってたけど、普通は気になるよね?

 愛する人が死ぬ前に書いた手紙だもの。

 目を瞑り、深呼吸を数回繰り返し、ゆっくりと便箋を取り出した。

『舞希ちゃん、元気?
僕や寛子は、いつも通り元気だよ。

そうそう。寛子さ、最近色っぽくなってきたんだ。

なんでかな?

僕、特に何もしてないと思うんだけど……。

うわー!考えたら不安になってきた!!

僕に色仕掛けしたって何も出てこないと思わない?

それとね。寛子、甘えてくるんだぁ。
それが、猫みたいで可愛いんだよ?』

 便箋の上半分は、寛子ちゃんのこと。

 うん。いつも通りの手紙。

 まず、寛子ちゃんとの仲を惚気るんだよね。カズくんって。

 ここまで読んで、口元が緩んでいることに気付いた。

 きゅっと口を結び続きを目で追う。


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