オレンジ色の奇跡


 梨海や優衣なら、だいたいの事情を理解してる。

 でも、井上くんは何も知らない。

 …………けど。
 今話さなかったら、あたしがあたしでなくなってしまうんじゃないか。

 不安やら苛立ちやらであたし自身が押し潰されてしまいそう。

「あ、のね?………岩佐先輩と連絡が取れなくて、ね」

「連絡が取れない?」

「あたしが原因なんだけどね?避けられてる気がして……。
もちろん、謝ろうと思ってるんだけど」

「連絡が取れないから謝るにも謝れない」

「うん……」

 井上くんは、一瞬眉を寄せたがすぐふんわりと微笑み「そっか」と、あたしの頭を一度だけ撫でた。

 スーッと不安が安心感へと変わる。

 でも。
 やっぱり、岩佐先輩の手のひらと井上くんの手のひらは全然違う。

 岩佐先輩に頭を撫でてほしい。

 岩佐先輩の笑顔がみたい。

 岩佐先輩の…岩佐先輩の……。

「………っ」

 零れそうになる涙を隠すため、ベッドの上で膝を抱く。


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