オレンジ色の奇跡
「あ!間違った。『一期一会』だ」
「はぁっ?!どうやったら間違えるの!?」
「ごめん、ごめん」
「もう……。意味分かんないっ!」
何が何だか分からないって言うのもあるけど、井上くんの新たな一面を見れておかしくなってきた。
気が緩むように笑えば、井上くんも釣られて笑う。
「やっと、笑えたね?」
「え?ホント、井上くんって意味分かんないや」
「大丈夫。相川さんなら」
「何が大丈夫なの?」と、聞いたあたしの声と、井上くんの「あ!」と、叫んだのは同時だった。
「ごめん!僕、帰らなくちゃっ」
「あ、うん。お花とお見舞いありがとう」
井上くんは、慌てた様子で「それじゃ」と、言い残し病室を足早に出ていった。