オレンジ色の奇跡


「…舞希、立てる?ほら、病室戻ろう?」

「り、みっ…ひっ……うんっ」

 梨海に支えられながら、再び渡り廊下を歩き小児病棟を抜ける。

 あたしこんなに歩いたの?なんて、ビックリするぐらい歩いたらしく病室に着くまで時間がかかった。

 その間、梨海はずっと黙って泣きじゃくるあたしの背中をさすってくれていた。

 あたしの涙が枯れた頃、梨海があたしを抱きしめ「さぁ、話してもらうから」と、チュと頬にキスを落とす。

「意識が戻ってから、今日やっと岩佐先輩と連絡が取れたの」

「そしたら、電話で……」

「うん。『別れよう、もう俺とは関わるな、別に付き合ってなかったことにしてもらってもいいから』って言われちゃった……」

「………それ」

「梨海?」

「何よそれ!!岩佐先輩って男よね?!だったら、何で電話で言うのよ!?そんな、大事なことを電話でっ……」

「梨海、ありがとう。
でも、ね?仕方ないことだったのかもしれない」

「何が仕方ないよっ?!!一方的に別れ告げられて悔しくないの?!舞希は何も悪いことしてないのにっ」

 悔しいに決まってる、言われなくたって勝手に決められて告げられて、こっちは意味分かんないもの。

 好きで、好きで、大好きで、連絡が取れない間も岩佐先輩のことをバカみたいに思ってたのに、何なのよって叫んで一発くらい殴りたい。

 でも、違うんだ……。


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