オレンジ色の奇跡


 ◇◇◇


「神崎先輩っ!」

 バンッと、ドアが開く音と七瀬の叫ぶような声が教室に響いた。

 七瀬は泣いていて顔がぐしゃぐしゃ。それに、相当急いで来たのか息が上がっている。

「あれ? 梨海ちゃんどうし――」

「優衣が……っく……優衣がっ!!」

 その瞬間。七瀬に向けていた人当たりの良い微笑みが祥也の顔から消えた。

「おっ男たちにっ!……ぅぇっ……つ、れてかれてっ……今、舞希が探してる……っ」

「っ!!」

 ぐっと怒りと悔しさを混ぜ合わせたような顔をした祥也は、大きな音を立てて教室を飛び出した。

「っ祥也!!!!」

 俺は祥也の背中を追うように廊下に身を投げたが、再び教室に戻り、

「七瀬は、ここで待ってろ」

 丸い肩に手のひらを弾ませた。

 でも。七瀬はちゃぐちゃになった顔を擦りながら首を横に振って、

「はあ? お前はここにい――」

 俺を無視して祥也の背を追うように走りだした。

「ったく……」

 俺は教室を飛び出し、二人の背中を追う。 七瀬は、相川が先に探してるって言ったよな……じゃあっ。

 あの人たちの妹だ。椎葉を見つけても俺たちを待たずに飛び込むに決まってる。そしたら……相川舞希も危ない。

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