オレンジ色の奇跡


 そんな二つの音色に誘われるように病室と反対方向に向かえば、おじいちゃんやおばあちゃん、小さな子供もお見舞いに来ただろう花束を持った人達が微動だにせず、たぶんあるであろうピアノと美声の持ち主を囲んでいる。

 そんな人だかりを無視するように病院内を早歩きをしていた看護師やお医者さんすら、立ち止まってしまう。

 まぁ、あたしも同じなんだけど、持っていた缶ジュースがぬるくなっていることに気付かないくらいだったんだから。

 1曲目が終わり、2曲目が始まった。

 さっきの曲がしっとりとした優しい柔らかい印象だったとすれば、今度の曲はガラリと雰囲気を変えアップテンポの印象、かな?

 こういう時に、「あ!この歌っていい歌だよね〜」とか、言えたらいいんだけど。

 ほら、曲名とか分かれば、ねぇ。

 完璧にジャパニーズミュージックなのに、まったく分からないのはたぶんあたしだけなんだって思うくらい、止まっているあたしとすれ違う人が口ずさんでたり、そのさっき言いたかった言葉を言ってる。

 だって、しょうがないと思わない?

 5年間もアメリカにいたんだし、こっちに戻ってきて約4ヶ月の間で耳に入ってくる曲(CMで使われてる曲とか、ドラマで起用される曲とか!)ってわずか、だよね?

 それに、好きになった歌手しか興味ない(最近梨海に「単に音楽に疎いんでしょ?」なんて言われたけど、そそそんなことないっ!)、って言い切れると思う、あたしならっ!!


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