オレンジ色の奇跡
「………俺、何やってんだよ」
「遅いんですよ、何もかも。
連絡出来なかった理由は知りませんが、メールの一つや二つ、するべきだったっ!
……舞希は、岩佐先輩が思っている以上に強い子ですよ?」
「あぁ、舞希は強い。他のどの女よりも」
分かってたのに、な。
意志が強くて、とにかく中身で判断するっていう面白い考えを持ってて……。
舞希なら「あたしのことは気にしないで!あ、でもケガはしないでね?」って、言ってくれた気がする、な。
「舞希が岩佐先輩のこと、どう思ってるかは言うつもりはありません。
……知りたかったら、ご自分で確認して下さい」
「んなこと、わあってるよ」
「それと、何抱えてるか知りませんけど、おもいっきりやっても舞希は大丈夫ですから。
思う存分、逆らえなくなるくらいまでやったらどうですか?」
「はあ?」
「さっき言いましたよね?舞希は強いって、ね?」
意味分かんねぇ……。
言いたかったことは、全部言ってスッキリしたのか「では」と、去っていく七瀬。
祥也の迎えにも、自分の教室にも行く気になれねぇために、保健室(1月に屋上ってさすがにさみぃだろ?)に脚を進める。
暖かい保健室とは違い、冷えた固いベッドに身を投げ、目を瞑った。
寝よう、と思ってたくせに瞼の裏は“相川舞希”の顔しか出てこねぇ。
舞希を振った自分が許せなくてベッドを殴ったが、情けなさと悔しさは消えなかった。