オレンジ色の奇跡


 それから、毎日のように携帯を開いては閉じての繰り返し。

 自分でも女々しいとは思うが、あと一歩のトコロで電話ができねぇ。

 電話して呼び出して……どうするんだ?

 そこで普通なら告白かもしれねぇけど、俺は何をしようとしてるんだよ。

 確かに、舞希のこと振ったくせにいまだに好きだし?

 だからって一応、別れたんだし?

 ってか、舞希がどう思ってるか分かんねぇから、玉砕っていう可能性も捨てきれねぇし?

 ………バカか、俺は。

 あぁ!
 なんでこうモヤモヤするんだよっ!!

 ひとりの女にこんなに必死になって、離したくないのに手放して、それで後悔したなんて初めてだろ。

 畜生。
 アライなんか、すぐ潰しとくんだったな。

 あの日――アライ達に待ち伏せされた日、迷いなく殴り倒してとっとと逃げようと思ったのに。

 殴る瞬間、舞希の顔が頭を過って、手が止まったんだ。

 別に『喧嘩をやめる』とか『喧嘩、やめて?』とは、言ったり言われたりしてねぇのに。

 情けねぇよな、その隙をついて殴られて、でも、殴り返そうとも思えずに、逃げ回った。


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