オレンジ色の奇跡


 いち早く学校を飛び出し、とりあえず人気(ひとけ)のない所を探し、座って待ち伏せ。

 どうせ来るんだろうな、と思いながら、天を仰ぐ。

 ポケットから、白くクシャクシャになった箱を取り出す。

 ライターが見つかんなくて、ポケットの中に手を入れた時、舞希の前でタバコ吸ったことなかったな、なんて考える。

 ちょうど、1本吸い終わったころに、挑発しておいた男が現れた。

 俺のことが相当気に食わねぇらしく、殴りかかってくる。

 俺にとっては、このくらいのパンチ遅いけど、女にとったら早いんじゃねぇの?

 三人が座り込んだのを見て、俺もしゃがみ、胸ぐらを掴む。

「あれ、俺の女じゃねぇんだけど?

それと、さ。
俺、逃げるとか性に合わねぇんだ。アライに、決着付けようじゃねぇかって言っとけ。あ、カジでもいいぞ」

 バンッと、壁に叩きつけ立ち上がった。

 2月の冷たい風が俺を包む。

 欠伸を噛み締めながら、ポケットに手を突っ込み家路を急ぐ。

 信号に引っ掛かり寒いなか待っていると、右から直進して来た黒い車が目の前に止まった。

 ………もしかして、な。

 一歩下がって、ポケットから手を出し、車を睨む。
 有名なメーカーの高い車でも、ワゴン車でもない普通の乗用車。


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