オレンジ色の奇跡
警戒しながら車から降りてくる男を見て、握っていた拳を解いた。
「………ヒナかよ」
「文句ある?」
「別に。車、変えたんだ」
「ん?あれは、華(はな)の車」
車から降りてきたのは、ヒナ――日生 陽(ひなせよう)。
冷たい風が黒よりの茶色の髪を揺らすと「さっさと車乗れよ」と、俺を睨む。
ヒナは、朔真さんの親友。
朔真さんは大学に進学したけど、ヒナは短大に進学し祥也んとこ――神崎産業の秘書に就職。
幼なじみで彼女の華さん――新木 華(あらきはな)さんと一緒に敏腕秘書という肩書きの元、バリバリ働いてるらしい。
強引に俺を車に乗せ、車を発進させたが、運転が荒い。
「サクから聞いた。振られたんだろ」
「……わざわざそれ言うために、華さんの車借りたのかよ」
「は?馬鹿だろ。俺がそんな無駄なことすると思ってるわけ?俺が聞きたいのは、どうしてサクとハルの言ってることが違うか。まぁ、ハルはサクに合わせてるみたいだけど? 啓輔。舞希を振るとかあったま悪いよな。それに、ハルが……なんだっけな? えーと、あ、そうそう。『啓輔、なんかに巻き込まれてんじゃねぇかな』っだってさ。巻き込まれるとかありえねー。頭使え」
手荒い運転してるくせに、ホント、良くしゃべるよな。
一方的に事実をスラスラと、悪怯れた様子もなく言い放ち、しかも言い方が頭にくる。
事実、だからなのかもしれねぇけど。