オレンジ色の奇跡
「早く降りろよ」
「車が止まったら降りてやるよ」
速度を落としてるとはいえ、20〜30キロは出てんだぞ。
そんな時に、ドア開けて降りるバカがいるかっ!
ってか、降ろそうとするんじゃねぇよ!
ぜってぇ嫌がらせだ、と思わせるような、ブレーキの踏み方で俺は前につんのめる。
車から降りて運転席に回ると、ヒナが窓を開けてニヤリと笑った。
「標的は、カジとアライ、その他諸々、か」
「俺は、何すればいいわけ?」
「うーん。そうだな。鍛えておくことと」
「と?」
「……舞希を手に入れること」
「……………」
「ほら、俺と華みたいな略奪愛も良いだろ?まぁ、お前らは略奪でもなんでもないけどな。
それに、さ。二人が戻ってくれないと、俺の将来設計が音を立てて崩れてくんだよ」
なんだよ、それ。
ヒナの将来設計ってろくなもんじゃねぇと思うんだけど。
それに、俺が組み込まれてんのかよ。
「略奪愛、ねぇ。華さん、カワイソ。
俺は、ヒナみてぇに無理やり手に入れたくねぇんだよ」
「いいんだよ。華には俺の方が合ってんだから。じゃあな」
ブオォォォンッと、アクセルを踏み込んだ音が響くのを背中で感じながらマンションに脚を踏み入れた。