オレンジ色の奇跡


「………そしたら」

「そしたら?」

「………しょうがない、じゃん?あたしじゃダメだったんだって、すっぱりきっぱり諦められ、る」

「別れた理由が分かんなくても納得できるんだ、舞希は。好きなくせに、その気持ちを閉じ込めるようなことするんだ。いいんじゃない?諦めれば。諦められるならの話だけど」

「梨海ちゃん、それ以上は……」

「いいのよ、この意気地なしには。 やっと、あたしの前で優衣の前で泣いてくれたと思ってたのに、心から笑ってくれたと思ったのに。 舞希が昔みたいに戻ってくれたことがどんなに嬉しかったか、分からないでしょ?! そんな舞希を戻したのが、岩佐先輩だと思うと悔しかったけど、岩佐先輩の所為でまた舞希が戻るほうが悔しいのよっ!!」

 騒いでいるみんなに聞こえないように、でも、あたしの耳にはこれでもかってほど、低く、響き、残る。

 言い返したくても、言い返せない。

「……舞希」

 梨海の、あの明るくて弾んだ声じゃない。

 自然と下がっていた頭をゆっくりと上げた瞬間。

 軽い音と共に、頬に鈍い痛みが走った。

 驚いて口を開こうとした時には、チャイムが学校全体を包み、夢中で話していた人達は物足りなそうに席に戻る。

 ジンジンと梨海の手のひらが当たったところが熱を持つ。

 ………痛い。

 頬だけじゃなくて、何もかも。

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