オレンジ色の奇跡


「舞希〜、そんなにほっぺた痛かったの?」

「……ううん」

「舞希ちゃん………」

 梨海はあたしの頬を、優衣はキツく握られた拳を、柔らかい手で包み込む。

 なんだかその温かさに、優しさに、込み上げてくるものを押さえられない。

「ご、めっ……」

「泣け泣け」

「舞希ちゃんには、私たちがいるよ?」

 ……話そう。

 あたしがさっき考えていたことを、全部。

 戦わなくちゃ、乗り越えなくちゃ、走りださなきゃ。

「…あ…たし……あきらっ…め…る」

「舞希ちゃん……」

「でも、今すぐは…無理……だから。岩佐先輩がっ…卒業するまでは、好き……でい…る」

「そう。殴るっていう計画は?やらない?」

「……うん。もう、岩佐先輩に会う機会なんてないと思うから企画倒れ、かな?」

 梨海はため息をついた後「応援するって決めたのにっ」なんて、ちょっと不貞腐れてるけど、あたしにとって何よりの元気の元。

 ふっと笑うと、二人とも笑ってくれる。

 あたしには、これだけで充分。


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