オレンジ色の奇跡


 玄関を出ていつもの道を進む。

 見慣れた風景が、あたしを安心させ、正常な考えをもたらせてくれる。

 深呼吸を繰り返しながら、歩くスピードも落としていく。

 ぱっと、辺りを見回すと、とっくに家を通り過ぎていたらしく、子どもの声が耳をかすめた。

 脚が、体が。
 この場所を覚えている。

 子どもの声に釣られてか、ふらふらと、公園に足を踏み入れた。

 懐かしい、な。

 あたしと岩佐先輩、ここで出会ったんだっけ?

 今考えると、金髪の岩佐先輩が公園にいたなんて面白くって笑っちゃうよね。

 …………また、ここから始めよう。

 確実に、でも一歩ずつでいいから、前に進まなきゃだもんね。

 ちょっとの間、心がスースーするかもしれないけど、我慢できないわけじゃないんだ。

 …………よし。

 公園の真ん中辺りで立ち止まり、鞄を下に置き両手を首の後ろに持っていく。

 てこずりながらも金具を外し、それを右手で包み胸の前で右手ごと左手で握った。


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