オレンジ色の奇跡
「相川」
俺は、相川にゆっくりと近づく。
「……大丈夫か?」
「はい。大丈夫です…」
セーター姿の相川は、弱々しいながらも微笑み、脱ぎ捨てられたブレザーを拾った。
「椎葉は保健室にいる」
「良かった」と胸を撫で下ろした相川は少し足元がふらついた。 それを受けとめた俺は、相川の頬が切れていることに気付いた。
「すみません……」
「相川ここ切れてる」
ゆっくりと俺から離れる相川に、自分の頬を触りながら切れてる所を教えれば、相川も俺の動きを真似て自分の頬を触る。
「あっ。本当だ……切れてる」
「保健室行くぞ。椎葉と七瀬に相川が無事だったこと言わねぇとな」
小さく頷いた相川を連れて、俺は保健室に向かった。