オレンジ色の奇跡
とりあえず、岩佐先輩の傍から離れたくて、軽く頭を下げたあと、岩佐先輩の横を通り過ぎようとした。
…………のに。
今度は左腕が引っ張られ、そのまま正面から岩佐先輩に抱き寄せられた。
一気に身体が熱を帯びる。
「……っ。離してっ」
「嫌だ」
「何でっ……」
「俺が舞希を好きだから」
「じゃ、あ、何で……」
「舞希を守るため」
「……あたし、を?」
あたしを守るため……?
一体何からあたしを守るの?
お兄ちゃん達を恨む人から?
それとも、岩佐先輩を恨む人から?
「舞希に叫ばれた日あったろ?次の日、病院に行く途中にアライ――駅で会ったヤツ。分かるか?」
「……はい」
「そいつに襲われたんだ。で、その日から逃げ回った。
アライの目的は俺を苦しめること、って考えると舞希が危なくなる可能性が出てきた」
だから、岩佐先輩はあたしから離れた、そう言いたいのかな?
でも、それだったらおかしい。
………連絡くらい、連絡くらいできたんじゃないかなって思ってしまうのは、何も知らないから言える、のかな?
言おう、と思って口を閉ざした。