オレンジ色の奇跡


 だって、抱きしめられてる感覚が全然違う。

 久しぶりで感覚が鈍ってるかもしれないけど、骨があたるような、そんなたくましさを感じる。

「何?言いてぇことあったら、言えよ。何も隠すことはねぇんだから」

「………どうして、連絡取れなかったんですか?」

「舞希を不安にさせたくなかった」

「……ふ、あん?」

「俺が狙われてるってことは、俺の女も狙われると同じことだろ?
そんなこと、電話で言われたら不安になるだろ?
言うとしてもちゃんと会って言いたかったし。まぁ、つけられてたから、どっちみち会いにいけなかったんだけどな」

「………なにそれ」

「舞希?」

 あたしが不安になると思ったから、あたしからの連絡をすべて無視したって言うの?!!

 身の危険なんて防げばなんとかなるじゃない!!

 まして、あたしは稽古とかアメリカにいた時からしてるんだし、岩佐先輩だって知ってるでしょ!?

 知らず知らずのうちに、落ち着いていた岩佐先輩の腕の中からするりと抜けた。

「ふざけないでっ!!そんな…連絡取ってもらわないほうが不安になるよっ!!!
自分の身は自分で守れるようになったから、こっちに帰ってこれたのっ。先輩だって、知ってるのに……」

 息もあがって、視界も歪んで……。

 睨み上げるような勢いで、岩佐先輩を見れば、驚いているのか目を見開いている。

 そんな岩佐先輩を見ても、あたしはやめない。


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