オレンジ色の奇跡


「13人は、カジとアライの手下みたいなもんだから“岩佐啓輔”に対する恐怖を埋め込めばよかったんだ。
で、カジとアライは恐喝、窃盗、傷害……あとなんだっけな。まぁ、忘れたけど捕まる要素なんて数えきれねぇほどあったってわけ」

「それだけじゃ、逮捕なんて……」

「できねぇよ?できねぇから、ヒナに頼んで証拠を掴んでもらって、残りは田村さんに頼んだんだよ」

 ヒナって、あのヒナ?!!

 朔兄の親友だよね?

 なんで、こう岩佐先輩って顔広いんだろ……。

「へ、へぇー」

「分かってんのか?」

「……はい」

 分かってるって言えば、分かってるけど、なんだか信じられない、のかな?

「舞希」

 甘く、低く、痺れるように。

 耳元であたしの名前を呼び、緩くなっていた腕をキツくする。

 さっきまで諦めるって決意してたのに、変なの。

 トクン、トクン、トクン、トクン。

 心臓がうるさくて、でも腕のなかは心地よくて、離れようとは――ううん、離れたくないと思った。


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