オレンジ色の奇跡
◇◇◇
俺は腕の中で泣きじゃくっている相川の背中をさすってやった。
「……ひっく……っ」
涙は止まる気配がない。
保健室に行ってからおかしいと思ったんだ。相川一人で男5人と戦って。まして、俺が来たときには羽交い締めにされてたっていうのに。
あいつはずっと笑顔だった。それも完璧な笑顔。いくらあの相川兄弟の妹だからって、あいつは男じゃない。女だ。
だから、ずっと様子を見てた。いつかボロが出る。そう思った矢先、相川の顔色がさあーっと悪くなって、自分で自分を抱くようにした。
何が相川を我慢させてたのか分からねえ。けど、こいつの泣き声を聞くたびに、もっともっと強く抱きしめたいと思った。
俺が女を抱きしめる……いや、興味を示すなんて、な。 今までの俺だったらありえねえな。
でも、離したくねえ、守りてえと思った。笑顔をもっと見てえとも思った。
俺が、抱きしめたり、離したくねえとか、守りてえとか、笑顔が見てえとか、思うのは相川だから、なのか?
……あぁ、そうか。
俺は、きっとあの日から。 あの公園で相川の笑顔を見たときから――
「……相川」
――惚れていたんだ