オレンジ色の奇跡

「何でって……舞希を運んでくれたんだ。 ちゃんとお礼言いなさい」

「あ、ありがとうございます。 ……え?でもあたし着替えてるよ?」

「あぁ……。それは、椎葉と七瀬がしてくれたんだよ。椎葉は祥也が送ってったし、七瀬は彼氏に来てもらうとか……」

「……そうですか」

 あっ……岩佐先輩がいるってことは、今日あったこと朔兄知ってるよね? お母さんやお父さんに言っちゃうかな?

 ……もし言っちゃったら、また、アメリカに戻らなくちゃいけないのかな?

 ……やだ。それだけは避けなきゃ。

「朔兄……あの――」

「言わないよ」

「……えっ?」

「優衣ちゃんと梨海ちゃんから頼まれちゃったからね」

 にっと優しく笑った朔兄。妹としてあんまり思いたくないけど、朔兄ってまあかっこいいんだよねえ。

 なんていうか、顔が神崎先輩と岩佐先輩のちょうど間で性格が神崎先輩より、みたいな。

「朔兄ありがとう」

 梨海と優衣が言ってくれた、ってことも嬉しい、けどやっぱり朔兄は優しいなって思った時だった。

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